婚約指輪や結婚指輪は左手の薬指につけるのが常識となっていますが、この習慣はヨーロッパで始まったものです。1614年のローマ典礼儀式書によると「結婚指輪は今後、左手にはめるべし」と定められ、誠実と貞節の証としてもっとも左手薬指がふさわしいとされました。
ではなぜ左手の薬指だったのでしょうか?
話は古代ギリシャ時代にさかのぼります。当時、心臓にはその人の心(感情)の中心があると信じられていました。心臓の中心に人を愛する心、つまり「愛情」が存在すると考えられていたのです。
また、ギリシャ神話では「左手の薬指には心臓につながる太い血管がある」といわれており、当時は解剖学的にもそう信じられていました。心につながる左手の薬指は神聖な場所であり、感情をコントロールする場所でもあったのです。
そのため左手の薬指で体に害をなすものに触れると、心臓に信号が伝わるとも考えられていました。当時の医師は左手の薬指で薬を混ぜ、毒が入っていないかを調べていたほどだといいます。
また、途切れないリング(円)は永遠と輪廻の象徴です。つまり結婚指輪を左手薬指にはめることで、「愛する相手の心を強固につかみ、結びつける」という意味があるのです。
このような理由から、ふたりの愛が永遠に結びつくために左手薬指へ結婚指輪をはめるようになったといわれています。
少し現実的な話になりますが、左手薬指に結婚指輪をする理由には「キズや紛失の心配が少ない」という理由もあるのです。
日本には右利きの人が多いため、右手に結婚指輪を着けると日常生活でキズや変形、紛失などが起こりやすくなります。また、結婚指輪は日常的に身に着けるものです。右利きの人が利き手に指輪を着けていると、生活動作をするうえで指輪が気になってしまうことも少なくないでしょう。
左利きの方には当てはまりませんが、結婚指輪を左手薬指にはめることは、右利きの方にとって「もしものトラブル」を防ぐという意味合いで有効だといえます。
左手薬指に結婚指輪を着けると、何も言わずとも周囲に「既婚者である」と知らせることができます。一般的に「結婚しているかどうかを尋ねる」という行為は、親しい関係でないとなかなかしにくいものです。しかし、左手薬指に指輪を着けていれば結婚していることが一目瞭然です。コミュニケーションがスムーズになるのは大きなメリットだといえるでしょう。
日本で結婚指輪を交換し、身に着ける文化が生まれたのは明治時代だといわれています。鎖国終了と共に欧米のさまざまな文化が広まりましたが、その中には教会で洋風の衣装に身を包んでおこなう「欧米の結婚様式」も含まれていたのです。
流行に敏感なカップルが洋風の結婚式を挙げたり、結婚指輪の広告が出されたりしたことで、結婚指輪を贈り合う文化が一気に広まりました。その後大正時代になると、「夫婦になったら結婚指輪を身に着ける」という慣習が一般的になったのです。
なお、婚約指輪の普及はそれよりも遅く、時を隔てた昭和30年代の中盤以降だといわれています。それ以前にはダイヤモンドの輸入制限があったため、婚約指輪を手にできる人はごくわずかでした。
しかしダイヤモンドの輸入制限が解除されて以降は、ダイヤモンドを中央にあしらった婚約指輪を贈ることがポピュラーになっていきました。「永遠の愛の誓い」であるプロポーズで左手薬指に婚約指輪をはめる習慣は、こうして今日まで根付いているのです。
日本では欧米式のウェディングスタイルが普及したこともあり「結婚指輪=左手薬指」という認識が強いですが、海外では必ずしもそうではありません。
たとえばロシアやドイツ、オーストリアなど東欧~北欧の国々では、右手薬指に結婚指輪を着ける習慣があります。
また、キリスト教でもプロテスタントは左手でなく右手薬指に結婚指輪をします。これは、キリスト教における右手薬指が「正義」の象徴だからという説もあります。右手薬指に結婚指輪をはめることで、「相手を一生愛し続ける」という誓いを立てているというわけです。
両手の指には「願いを叶える」「信念や愛を貫く」といったさまざまな意味が込められています。例えば親指なら左は「自分の信念・愛を貫き、実現させる」、右は「権威・責任・指導力を得る」という具合です。
左手薬指には「愛の絆を深め、願いを実現させる」という力があるとされています。そのためおふたりで人生を共に歩み出す「結婚」や、その誓いの印である「結婚指輪」に適した指なのです。
ただし先述のとおり、結婚指輪は「必ず左手薬指でなくてはならない」という決まりがあるわけではありません。国・文化・宗教によっても結婚指輪をはめる指は変わります。また「左手薬指に着けると支障がある」など、さまざまな理由から他の指に結婚指輪を着ける方もいます。
大切なのは、自分に合った身に着け方で楽しむことだといえるのではないでしょうか。
最近では日常的に婚約指輪を身に着ける人も増えています。結婚指輪と重ねて着けるときには、結婚指輪は指の根元に、婚約指輪は外側(指先側)に重ねるのが一般的とされています。
それは指輪を交換する際に、一度婚約指輪をはずして結婚指輪をはめ、その結婚指輪を婚約指輪で“永遠の愛の証”としてロックするためだといわれています。
近頃ではこの一連の動作を「エンゲージカバーセレモニー」として結婚式に組み込むカップルも増えています。中にはエンゲージカバーセレモニーの際に、新郎からサプライズで再プロポーズをするなど、よりロマンチックな演出をする方もいらっしゃいます。こうした演出をおこなうことで、おふたりの幸せな記念として強く記憶に残ることでしょう。
結婚指輪と婚約指輪は重ね付けすることでより華やかな雰囲気の手元が楽しめます。女性側が「普段から重ね付けを楽しみたい」という場合は、初めから重ねやすい組み合わせの結婚指輪・婚約指輪をセット購入しておくのも賢い方法です。
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